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どんなに優秀なデザイナーと言われても
それだけでは一緒に仕事をしようとは思わない。
合う、合わないがあって当然だから。
溝田さんはビジネスの垣根を超えた
ものづくりをしてくれる人。
僕のクリエイティブ魂は嬉しくて振るえっぱなしだった
公開から4年半、映画「うまれる」はすでに40万人の観客を動員し、二作目の「うまれる ずっと、いっしょ。」も全国各地で上映会が続いています。監督は「命と家族と絆」をテーマに、関係性のドキュメントに焦点を当てることを常とする豪田トモ氏。デザインエイエムでは代表の溝田がアートディレクターとしてタイトルロゴに始まり、本編内の文字デザインから、告知・宣伝用のウェブサイト、チラシ、ポスターなどの各種デザインをお手伝いさせていただきました。出演の方々はもちろん、外のスタッフとの“関係性”にも心を配る豪田監督との時間は「濃密で豊かな時間だった」と語る溝田ですが、監督ご自身にも当時を振り返りながらお話を伺いました。
ありがとうございます。「命と家族と絆」というテーマは、本当に広くて深く、到底一作品では表現しきれません。2040年までシリーズでつくり続けていきたいと思っています。一作目、二作目ともにドキュメンタリーになりましたが、この先は役者さんを立てるかもしれないし、アニメ版「うまれる」ができるかもしれません。「うまれる」が公開した2010年に生まれた子どもが30年後、親になる頃まで、いろいろなパターンでつくってみたいと思っています。溝田さんにはアートディレクターとしてコンセプトづくりから入っていただきましたが、定例会にも参加してもらい、一緒につくりあげた感が本当に強いです。
なぜ溝田さんにお願いしたか。我々がやろうとしている企画に対して理解をし、共感をし、一緒に考えてくれる「同志」としての感覚を覚えたからです。何人か他の方とも話をしましたが、僕には群を抜いて波長の合う人でした。
沖縄ロケでした。言葉だと表現しきれませんが、その時も作品に対して絶対的なものをつくるんだという、互いのクリエイティブ魂がすごく合う人だと思いました。これはあくまでも持論ですが、ビジネスだけで一緒に何かを作った時って、結果はせいぜい超高層ビルの高さがMAXだと思うんです。それが「同志」になると、雲の上まで突き抜けて行く可能性が出てくる。普段のフィールドは違っても「同志」のような感覚がものづくりにはとても必要なことだと思います。
結局、ロゴ、タイトル、パンフレット、メインビジュアル、Webサイト、ポスター、チラシ、映画内エンドロール、書籍の装丁等々、デザイナーが必要なところは全部お願いしました。溝田さんは「映画の仕事は初めてだ」とおっしゃっていましたが。
不安どころか、わくわくでした。映画というフィールドは、大きいといえば大きいですが、厳密に言えば細かい仕事です。あれも作って、これも作って、それもデザインして。本来であれば「こんなイメージで」とか、「文字数はこれくらいで」とか、ディレクションを必要とするところも、溝田さんは僕の考えを“2”伝えると“10”わかってくれる人です。残りの“8”の説明を省けるからいいという意味ではなく、曖昧な部分も感じとってくれるという意味です。それはふたりの波長が合うからで、他の人がどうかはわかりませんが、「僕はそうでした」とお伝えしておきたいですね。
一番感じたのはデザイナーの枠を超えた仕事ぶりですね。彼の頭の中にあるのは、どうデザインするかとか、どうレイアウトするかではなく、どう伝えるか、どうしたら伝わるか。視点が深いんです。たとえば一作目の「うまれる」は、18トリソミーという障害を持ってうまれた、虎ちゃんという小さなお子さんを育てるご家族の写真をメインビジュアルにしました。虎ちゃんは一生涯、言葉を話す事が出来ないと言われているんですが、映画のコピーを考えるとき、溝田さんは「虎ちゃんがもし言葉を発することができるとしたら、彼は何が言いたいだろう」ということにまで踏み込んで考えてくれていました。ご提案いただくすべてのことに気持ちがこもっていて、はっとしたり、ぐっときたり。おかげで添えた題字の「うまれる」にも生命が宿るビジュアルとなりました。
実際その通りでしたし、溝田さんはふだん口数が少ないだけに、しゃべったときの説得力がハンパない。的を得ているし。実は僕、二作目の「うまれる ずっと、いっしょ。」のテスト試写の時に、溝田さんにばっさりと斬られましてね。でも、あそこで斬られたからこそ、作品の完成度がぐっと上がったんです。
テスト試写とは、公開前に一般の人にフィルムを見てもらって忌憚のない意見や感想を聞く場です。料理が出来上がる前に食べてもらうようなものなので、どの監督も完成前テスト試写をやる事はたいがい嫌がりますよね。
ははは。斬られて痛かったですよ。
「うまれる ずっと、いっしょ。」は3組の家族のドキュメンタリーで、そのうちのひとつが、奥さんに先立たれて泣き暮らしていた65歳の男性が、悲しみの底から回復していくお話。実際、その男性はカメラを回している間、特に最初の頃はずっと泣かれていました。当然、試写のスクリーンに映し出されるほとんどが泣き顔でした。それを見た溝田さんは、「いい大人がめそめそ泣いている話は、あんまり惹きつけられない」とばっさり。おっしゃる通り。溝田さんの一言で「ああ、そういう視点もあるのか」と考えることができ、方向性を変えることもできました。「いい大人のめそめそ」が必要以上に観客の脳裏に焼き付き、試写の時の溝田さんと同じように感じる人がいたら不本意です。どの仕事もそうだと思いますが、「違う」という指摘があった時、どう対応できるかって大事だなと改めて思いました。
題字のデザインは本当にたくさんの方が「いいですね」と言ってくださっています。「この映画にとっても合っていますね」とも。「うまれる」という字に込めた意味ですが、“点と点を結ぶラインはそれぞれの人生。命をつなぐへその緒でもある”なんていうところまで、溝田さんが考えてデザインしたとまではみなさん知りません。それでも無意識のレベルで何かを感じ取ってくれているから、そう言ってくれるのだと思います。
あとは「ドキュメンタリー映画なのに映像がきれい」と言ってくださる方も多いです。素人の方でも作ろうと思えば作れないことはないドキュメンタリー映画って、とかく低予算で泥臭い映像になりがちですが、デザインワークによって統一感が出たことで、全体のイメージ・レベルがきゅっと上がったのも確かです。
僕の中には継続的にこうしたテーマで作品を世に出すことで、何かしらのお役に立てたらという気持ちがあります。当然、溝田さんともまたご一緒させていただきたいと思っています。でも、作品によっては他の方にお願いすることもあるかと。それでわだかまりができる人ではないし、信頼関係が壊れることもないと思います。期待することは「いままで通りで変わらないでください」ですね。
ご協力いただいた企業様
映画「うまれる」シリーズ 企画・監督・撮影
豪田トモ様
「人と地球に優しい映像」をテーマとした映像プロダクション「インディゴ・フィルムズ」代表。1973年、東京都生まれ。大学卒業後6年間のサラリーマン生活を経て、29歳でカナダへ渡り4年間映画製作を学ぶ。在カナダ時に制作した短編映画は日本、バンクーバー、トロントなど数々の映画祭にて入選。帰国後はフリーランスの映像クリエイターとして、テレビ向けドキュメンタリーやプロモーション映像を手掛け、2008年秋よりドキュメンタリー映画「うまれる」の製作を開始。著書に「うまれる かけがえのない、あなたへ」(PHP研究所)、「えらんでうまれてきたよ」(二見書房)がある。
ドキュメンタリー映画『うまれる』 WEB SITE
ドキュメンタリー映画『うまれる ずっと、いっしょ。』 WEB SITE
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