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知っておきたい「商標」の基礎知識 ― 弁理士に聞いた5つのQ&A

2025/06/17

企業にとって「商標」は、自社のブランドやサービスを守るための重要な知的財産のひとつです。
とはいえ、具体的にどこまで保護されるのか、どんな場面で注意が必要なのかは、意外と知られていないかもしれません。

先日、弊社では提携先の弁理士事務所「IPP国際特許事務所」さまをお招きし、商標に関する社内勉強会を実施しました。

今回はその内容の一部として、実際にお客さまからいただいたことのある質問とその回答を5つピックアップしてご紹介します。
商標登録を検討している方はもちろん、ブランドや広報に携わる方にも参考にしていただける内容です。

商標権の基本知識はこちらからご覧いただけます。
商標権取得のすすめ

ご協力

IPP国際特許事務所 所長・弁理士 松下 昌弘さま

これまで多くの中小企業の知財業務に係わり、数々の成功する企業と失敗する企業の実態を目の当たりにしていく。その中で、成功している企業には、ある共通点があることを発見する。知財業務で「勝ち組企業」に変える知財戦略コンサルタント。各種協会、企業、大学でのセミナー講演150回以上。

Q1:企業名の後ろなどについている®(Rマーク)と™(TMマーク)の違いは何ですか?

商標登録の有無の違いです。

・Rマーク(®):Registered(登録済み)を意味しており、すでに特許庁で商標登録が認められたものにのみ付けられます。
・TMマーク(™):Trade Mark(商標)を意味しており、未登録または申請中に関わらずすべての商標につけることができます。

そのため、正式に登録を済ませた製品やサービスには®を、これから登録を目指す段階のものには™を使うのが一般的です。

Q2:キャッチコピーも商標登録できるのですか?

キャッチコピー(ブランドや商品を表す短いフレーズ)も、条件を満たせば商標登録できます。ポイントは、「ほかの会社や商品と区別できるか」という点です。
たとえば、ありふれた言葉ではなく、聞いた人が「この会社のものだ!」とすぐわかるような独自性が必要です。
実際、多くの人が目にする大企業のキャッチコピーなどで登録されることが多いです。

Q3:取得できるか不確実な商標の登録申請に挑戦するべきでしょうか?

登録できるかどうかが確実でない場合でも、実際に事業で使用する予定があるなら、申請してみる価値はあります。

一般名称に近い(識別力)の点で、仮に拒絶されたとしても、他社の申請も同じ理由で拒絶される可能性が高いことが確認できるため、安心して使用することができるためです。

また、「先に似た商標がある」として審査で一度拒絶された場合は、特許庁に対して「うちの商標はここが違う」と主張・反論するチャンスがあるからです。

ただし、最終的に審査官の判断で「類似」とみなされると登録できないリスクもあるため、申請前に類似調査を行い、リスクを理解したうえで挑戦することをおすすめします。

Q4:登録された商標は、どこまで権利の主張ができるのでしょうか?

商標登録が認められると、そのマークや名前を「自社のもの」として独占的に使える範囲が定まります。この範囲は、申請時に「この分野において商標を使います」と指定した商品やサービスのカテゴリ内だけに限定されます。

たとえば、飲食店向けに「○○」という名前で商標登録をした場合、同じ名前で飲食業に関わる商品・サービスを他社が使用した場合に、使用をやめるよう警告することができます。

一方で、同じ「○○」という名前をまったく別の業種(例:ソフトウェア開発)で使っても、登録した「飲食業」の範囲外なので商標権の効力は及びません。

Q5:他社の登録商標を自社のブログなどで使用するのは問題ないですか?

基本的に、他社の登録商標を単なる引用、情報提供目的などで使用する場合は、大きな問題になる可能性は低いです。

一方で、その商標を自分のブランドのように表記したり、普通名称であるかのように使用した場合は、問題になる可能性があります。
そのため、他人の商標を掲載する場合は、商標記号(®、™)や引用符(””)で囲み、商標である点を配慮し、権利者情報(出典)を明示することをおすすめします。

【Texted by】
MIZUHO OGURA(director)

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