[ユニコム]ロゴリニューアルから始まったBtoB企業のブランディング。 ユニコムの価値を統一した世界観で発信する意義とは。
2025/10/16

設計から製造、販売、メンテナンスまで一貫して手がける油圧専業メーカーの「ユニコム」。
事業承継と売り上げ20億円の達成を機に、ユニコムの企業風土も進化させていきたい。
同社社長 藤原康雄さまの思いをもとに、企業ブランディングに取り組んでいます。
ロゴリニューアルから始まったブランディングの背景を振り返りながら、意義や効果についてお聞きしました。
ご協力いただいた企業さま

ユニコム株式会社
社長 藤原康雄さま
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先代社長(現会長)のあとを受け継ぎ、2021年に代表取締役社長に就任。全社一丸となり、名実ともに油圧専業メーカー日本一を目指している。長期的にさらなる成長を実現させるために、ブランディングにも取り組まれている。
会社の風土を変えていく。
その第一歩がロゴリニューアルでした。
念願だった売り上げ20億円達成の見込みが立ち、社員に何か還元できないか考えていました。そのとき、ある社員から「社章が欲しい」と言われたんです。その思いに応えようと動き出し、社章のデザインをどこに依頼するか検討していたとき、ふと思い出したのが溝田さんでした。
京セラの創業者、稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶ「盛和塾」の塾生が集う「世界大会」が2022年9月に開催され、藤原さんも私も参加していたんですよね。偶然、同じテーブルになって名刺交換したのを覚えています。
溝田さんの名刺に「ブランディングで志をカタチに」というコピーが記載されていて、それがずっと印象に残っていたんです。ただ、住所を見たら、デザインエイエムさんの事務所は東京都渋谷区とある。うちのような地方の小さな会社の相談なんて乗ってもらえるのか不安もあったのですが、「ダメもとだ!」と思いながら連絡したのを覚えています。
「盛和塾」のご縁で連絡をいただけたことは、本当に光栄でしたし、背筋が伸びる思いでした。稲盛経営哲学を学ばれているということは、藤原さんも私もお互い、自社で働く人たちを幸せにすることを大事なテーマとしていますよね。そんな共通点があることからも、私たちにできることであれば精一杯お手伝いしようと思いました。
_社章づくりの問い合わせをきっかけに、ロゴマークのリニューアルに取り組まれました。どういった経緯だったのでしょうか。
ご連絡いただいたのは、藤原さんが事業承継をして1年ほどたった頃でしたよね。
そうです。創業者の先代は、ゼロからイチを生みだしたパワーのある人物で、会社が進むべき方向も自ら考え、先導していくタイプでした。一方、私は先代とはタイプが異なります。だからこそ、社員一人ひとりが主体的に動けるような会社をつくりたいと思っているんです。もちろん、これまでのやり方に慣れている社員もいると思います。でも、自分たちの意見も取り入れながら、一緒に会社を盛り上げていきたいと感じている社員もきっといるはずです。
私は事業承継を機に、会社の風土を変えていきたいという思いがあったので、まず経営理念をつくりました。「なぜ、ユニコムという会社が存在するのか」「なぜ、ユニコムで働くのか」――その意味を明らかにするために、これまで先代社長が築き上げてきたものを土台にして、言語化しました。さらに「ユニコムは変わろうとしている」ことを社内外に伝えるためにも、ロゴマークの刷新や、場合によっては社名の変更も視野に入れながら、何ができるかを考えていきました。
お問い合わせをいただいてから、オンラインで何度か打ち合わせを重ねていく中で、藤原社長の思いが少しずつ見えてきました。
溝田さんからご提案いただいたのは、社章をつくることを前提に「社名は変えずに、ブランドの価値を磨いていく」という方向性です。その第一歩として、ロゴマークのリニューアルをご提案いただきました。

私たちを深く理解しようとしてくれている。
その熱意とリサーチ力の高さに驚きました。
私がつかみたいのは、「藤原社長は何を達成すれば、この生涯を気持ち良く終えることができるのか」。大げさに聞こえるかもしれませんが、その思いを丁寧にすくい取ることができれば、アウトプットはきっと強いものになると考えています。感覚的な話にはなりますが、そうした“エッセンス”をすべてのアウトプットに込めることができれば、芯のある、ぶれないデザインになると信じています。
_ロゴの提案は6案だったそうですね。採用された1案は、どのように選ばれたのですか?
決め手となったのは、「立体は支え合う力を表したもので、互いに支え合いながら共に成長していくユニコムの社風の象徴」というロゴの持つ意味合いです。会社をより良くしていくためには、社員一人ひとりの力が欠かせません。その思いが最も込められていると感じられたデザインを、選ぶことにしました。
_デザインのポイントは?
立体的なデザインのモチーフは、「マニホールドブロック」という油圧の回路を構成する、金属でできた立方体の部品です。この部品を自社で製造できることはユニコムさんの強みのひとつであり、今後さらに力を入れていく事業であることから、そこに着想を得ました。配色は、これまでのロゴマークで使われていた黄色と、ユニコムさんを象徴するキーワード「質実剛健」からイメージした紺色の2色。書体とUNICOMの「O」の内側に配した黄色は、リニューアル前のロゴからの引用です。
20億円達成を記念して開催したイベントでは、新しいロゴの発表を行いました。そのとき事前に記録していたロゴの選考の様子をまとめたムービーも上映しました。実は、このムービー制作も、デザインエイエムさんからの提案だったんです。当日は、社章と名刺、そして記念品としてロゴ入りのバカラのグラスを社員一人ひとりに手渡しました。会社が変わろうとしていることを、少しでも感じてもらえたのではないかと思っています。
ロゴマークのリニューアルやブランディングでは、その意図を全社員に伝え、浸透させることも大切なことだと思っています。
そうですね。今回は全社員が参加する研修の場で、溝田さんにデザインやブランディングについて説明していただきました。
「ブランディングに取り組むと、どうなるのか」。溝田さんのお話は、そんな問いから始まりました。ブランドを磨くことで、会社の価値が上がり、人としても成長できる。採用もスムーズになり、業績も上がり、最終的に働く社員一人ひとりが幸せになっていく。こうした好循環が生まれ、自分たちの“格”を上げていくことにもつながっていくという内容で、まさにその通りだと思っています。
シンプルなのに目立っている。
広告や採用ツールなど、デザインの力を実感しています。
_BtoB企業がブランディングに取り組む意義や必要性については、どのように考えていますか?
正直なところ、当初は少し迷いがありました。しかし、今は継続して取り組むべきことだと確信しています。そのきっかけとなったのが、地元企業として出稿した小さな広告でした。高校総体の選手名簿を兼ねた小冊子に毎年、地元企業が広告を出稿しています。5000円から1万円ほどの小さな広告枠なので、これまでは地元の広告代理店にデザインも含めて一式お任せしていました。
しかし、2024年にロゴマークを刷新した流れで、「もしデザインエイエムさんにお願いしたらどうなるだろう」と思い、挑戦してみることにしたんです。すると、完成した広告は、「油圧の力で未来をつくる」という新しいタグラインのほか、社名など必要最低限の文字情報、そして写真のみのデザインで、極めてシンプルな仕上がりでした。
それが冊子に掲載されると、どの企業よりも目立っていたんです。ロゴとビジュアル、メッセージが一貫した世界観で表現されていて、その瞬間、デザインの力とブランディングに取り組む意義を実感しました。地元企業に留まることなく、世界に羽ばたく企業になることが私たちの目標です。ブランディングは、その志をカタチにしていくための足がかりにもなると思っています。


ブランディングは、もともと持っている自分たちの価値を、第三者にわかりやすく、伝わりやすくするための手段のこと。一貫した世界観で発信することで生まれる波及効果は、社外だけでなく、社内にもきっとあるはずです。
採用ツールとして制作した二つ折りのリーフレットは、特に効果が出ています。写真を中心としたデザインが特徴で、実際に若い人たちの応募も増えました。リーフレットを見た地元企業の社長たちから、「これ、どこで作ったの?」と聞かれることも多々あります。
他にも、ロゴ選考のプロセスを収録した社内向けの動画やブランドガイドラインなども制作しました。経営計画書の制作では進行管理や編集をサポートしていただき、無事完成させることができました。

_最後に、今後の展開について教えてください。
ホームページのリニューアルにも取り組み、2025年11月頃に公開予定です。また、2026年の完成を目指して、新工場の建設も進めています。工場のあり方や社内外への発信の仕方など、デザインの力をお借りしたいと考えており、溝田さんにはいろいろと相談に乗っていただいています。稲盛さんは、塾生同士を「魂を高め合うソウルメイト」と表現されていましたが、私にとって溝田さんは、まさに同じ志を持つソウルメイト。仕事のことを安心して相談できる、信頼できるパートナーだと思っています。
稲盛さんが繋いでくださったご縁、本当に有り難いです。ブランディングは経営同様、長期的に会社の信頼を育てる取組みです。これからも継続して、じっくり向き合っていきましょう。今日はありがとうございました。
【Texted by】
デザインライター 西山薫
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