複数事業のWEBサイト、統一感は作れる? 画一化を防ぎ個性を活かす設計術
2026/11/06

複数の事業やグループ会社を展開する企業がWEBサイトを制作・リニューアルする際、「事業ごとに依頼先も運用担当も異なり、デザインがバラバラで統制が取れない」「どこから手をつけるべきか、どこにブランディングの相談をすべきかわからない」といった課題が数多く寄せられます。
逆に、「デザインを統一しようとするとテンプレートのようになってしまい、各事業の強みや個性が消えてしまう」というお悩みも少なくありません。
複数事業のWEBサイト制作で一番大切なのは、「基本のトーン&マナー(共通の軸)」でグループ全体の信頼感をしっかり固定しながら、「視覚的要素(撮影写真・カラー)」と「導線・レイアウト設計」によって各事業の特性や現場の熱量を際立たせるバランス設計です。
すべてを一から同じ型に当てはめるのではなく、各事業の強みや現場スタッフの想いを尊重しながら全体を整えることで、グループ全体のブランド価値向上と、事業ごとの成果(お問い合わせや採用)を両立させることもできます。
こちらの記事では、複数サイトで統一感と個性を両立させるための具体的なデザイン設計手法と、社内調整・合意形成をスムーズに進めるディレクションの方向性を分かりやすくご紹介しています。自社サイトの課題解決への第一歩として、ぜひご活用ください。
目次
なぜ複数事業のWEBサイトは「情報が混在してバラバラ」に見えてしまうのか?
事業の拡大や新規サービスの立ち上げに伴い、時期や依頼先を変えながらWEBサイトを増設してきた企業では、デザインや導線の整合性が取れなくなるケースが頻発します。経営者やWEB担当者の方が抱える代表的なお悩みには、以下の2つのパターンが存在します。
パターン1.
共通のトーン&マナーの欠如による信頼感の低下
事業部ごとに個別にWEB制作会社へ発注していたり、担当者の好みでデザインを決めていたりすると、フォントや配色、写真のテイスト、ボタンの配置などがどうしてもバラバラになってしまいます。
その結果、求職者や取引先が複数のサイトを訪問した際に「本当に同じグループ会社なのか?」と戸惑いを与えてしまい、企業グループとしての規模感や組織的な信頼感を損ねてしまうリスクが生じます。また、社内でも「どのルールに沿って運用すべきか判断できない」という管理上の問題が発生します。
パターン2.
テンプレートへの無理な当てはめが招く「画一化」の落とし穴
一方で、統一感を意識するあまり、全く同じWEBデザインテンプレートにすべての事業内容を無理やり流し込んでしまうのも失敗のもとです。
各事業によって、ターゲット層(BtoB顧客、BtoCユーザー、採用求職者など)、提供価値、現場の雰囲気は異なります。形だけを画一的に揃えてしまうと、それぞれの事業所ならではの強みや企業風土が見えづらくなり、誰の心にも刺さらない残念なWEBサイトになってしまいます。
全体をまとめる基本のトーン&マナーと「統一させすぎない」デザイン設計術
「一貫した世界観」と「事業ごとの個性」という一見矛盾する要素を両立させるためには、デザインの要素を「固定する部分(共通軸)」と「可変にする部分(個性の表現)」に明確に切り分ける必要があります。
まずは以下の通り、どのような要素を固定してどこを可変にするのかといった全体像を比較表で整理します。
| 設計項目 | グループ共通で「固定」するもの(共通軸) | 各事業で「可変」にするもの(個性の表現) |
|---|---|---|
| 見た目・デザイン | ヘッダー/フッター、基本フォント、ボタン形状・共通パーツ | テーマカラー、メインビジュアル、現地撮影のオリジナル写真 |
| 構成・機能 | お問い合わせ導線、企業理念ページ、共通ナビゲーション | ターゲット別の導線・機能(資料ダウンロード vs 採用動画など) |
| 伝える価値 | グループ全体の安心感・組織的な信頼感 | 現場の空気感、スタッフの生き生きとした熱量・地域性 |
このように整理したうえで、デザインエイエムでは以下の3つのポイントを意識してWEB設計を行っています。
1.基本のトーン&マナー(全体の軸)を設定し、デザインの基盤を作る
グループ全体としての安心感や信頼感を担保するため、WEBサイトの構造における「骨組み」となる要素を共通ルールとして設定します。
具体的には、以下の要素を共通化します。
- ヘッダー・フッターの共通パーツ: グループ全体の基本ナビゲーションや企業ロゴ、共通のお問い合わせボタンの配置を揃える。
- タイポグラフィ(文字表記): 全サイトで共通のフォント指定、見出しレベルの文字サイズルールを適用する。
- ボタン・パーツデザイン: 共通の余白やアニメーションルールを定義し、操作感を統一する。
これにより、ユーザーがどの事業サイトへ移動しても、「同じグループのWEBサイトを閲覧している」という認識を自然に持つことができます。
2.「画一的になりすぎない」工夫で、各事業の風土やこだわりを表現する
共通の骨組みを維持したうえで、視覚的な印象を左右するビジュアル要素を用いて事業ごとの個性を表現します。
- テーマカラーの切り替え: 各事業の属性やサービス領域に合わせて個別のテーマカラーを設定し、視覚的なアクセントをつける。
- 現地撮影による生きた写真の活用: 安易な素材写真(ストックフォト)やAI生成画像に頼るのではなく、実際の現場で働くスタッフの方々のありのままの表情や空気感を撮影して配置する。
画一的なテンプレートや作り込まれたイメージ画像ではなく、現場のリアルな熱量や風土をそのまま見せることで、事業固有の魅力と企業の誠実さをダイレクトに伝えることができます。
3.ユーザー層に合わせた導線・レイアウト調整で、事業ごとの「使いやすさ」を追求する
見た目のデザインだけでなく、各WEBサイトを訪れるターゲットユーザーの行動特性に合わせた機能面・レイアウトの調整も不可欠です。
例えば、BtoBの商談獲得が目的の事業サイトでは「資料ダウンロードやカタログ閲覧への導線」を最優先に、採用が目的の事業サイトでは「働く環境やインタビュー動画、応募フォームへのアクセシビリティ」を重視します。見た目の統一感を保ちつつも、導線設計はそれぞれのユーザーにとって最も使いやすい形へと細かく調整します。
各事業所の「やりたいこと」をどう集約する? 社内調整と合意形成をスムーズにするディレクションのコツ
複数の事業所やグループ会社が関わるWEB制作プロジェクトでは、現場の各担当者から様々な要望やリクエストが寄せられ、社内調整の難しさに直面することが少なくありません。
ここで陥りがちなのが、「各事業所の要望をそのまま足し算してしまい、結果として収集がつかなくなる」という事態です。
WEB担当者や事務局が社内調整を進める際は、以下のステップを意識することで、スムーズな合意形成と統一感のあるサイト設計が可能になります。
Step1.
「固定枠」と「自由枠」のルールを最初に提示する
ヒアリングを行う前に、「何が全社共通のルール(固定枠)で、どこが各事業部で自由に工夫できる領域(自由枠)なのか」というガイドラインを明示しておきます。
あらかじめ境界線を明確にしておくことで、各事業部も前提条件を理解したうえで要望を検討できるようになり、「全社の基本トーン&マナー」から大きく逸脱したデザインリクエストを未然に防ぐことができます。
Step2.
主観(見た目の好み)ではなく「目的とターゲット」軸で会話する
現場から「もっと背景色を派手にしたい」「この写真を大きく載せたい」といった見た目の要望が出た際は、単に否定・採用を決めるのではなく、「その事業の主要顧客(あるいは求職者)にどう伝わるか」という目的軸へ会話をスライドさせます。
「デザインの良し悪し」ではなく「ターゲットユーザーが使いやすく、信頼を感じられるか」を共通の判断基準に設定することで、感情的な対立を避けつつ客観的で建設的な議論へと導くことができます。
Step3.
現場の想いや強みをすくい上げ、共通フレームの中で最大化する
各事業所のリクエストの根底には、「自分たちの現場の強みや価値をしっかり伝えたい」という切実な想いがあります。要望を単にカットするのではなく、その背景にある「伝えたい価値」を深く汲み取ることが大切です。
まずは皆さまの中で、なぜそのリクエストなのか背景まで確認し、その上でデザイン会社へ要望を伝えることをおすすめします。
共通の基本ルールの制約の中で、カラーの使い分けや写真の撮り方、コンテンツの工夫によってその魅力を最大限に引き出す手法を提案してくれるだけでなく、各現場の納得感を高めながら全社として一貫性のあるWEBサイトを制作してもらえるからです。
【制作事例】統一感と各事業の個性を両立した、クリーンテックさまのWEBサイト設計
デザインエイエムがWEBサイト制作を担当させていただいた「株式会社クリーンテックホールディングス(クリーンテックグループ)」様の事例をご紹介します。
同社は、産業廃棄物処理やリサイクル事業を中心に、地域の環境保全を支える複数の事業所・グループ会社を展開されている企業です。
事業領域や拠点が多岐にわたるクリーンテックさまのWEB制作においては、グループ全体としての信頼性や企業姿勢を表現しながら、各事業の違いや現場の熱量をいかにビジュアルへ落とし込むかが大きなテーマでした。
なぜ素材写真やAI画像ではなく「現地での撮影」にこだわったのか
WEB制作においてストックフォトやAI生成画像が使われることも少なくありませんが、クリーンテックさまのサイトにおいてはふさわしくないと判断しました。
地球環境やゴミ問題、地域社会に対して直向きに向き合ってこられたクリーンテックさまの事業内容を鑑みたとき、本来の姿ではなく作り物で見せることは企業としての姿勢に反すると考えたからです。現地の風や空気、匂いを感じながら「真実の姿」を見せることにこそ最上の価値があると考え、実際に各事業所の現場へ足を運んで撮影を行いました。
撮影時にはあえてポーズを作り込むことなく、スタッフの皆さんが日々働く真面目な眼差しや、飾らない日常の表情をありのままに切り取っています。
事業所の垣根を超えた撮影で「グループの一体感」を表現
さらに、今回の撮影では「グループ全体の一体感」を生み出す工夫も取り入れました。
クリーンテックグループさまは、事業内容も拠点となる地域もそれぞれ異なります。だからこそ、現場で働く社員の皆さんが「自分たちは同じグループの一員である」と実感できるよう、またサイト訪問者にもそれが伝わるよう、事業所の垣根を超えたグループ撮影を実施しました。
異なる事業所のスタッフ同士が笑顔でコミュニケーションを交わすシーンなどを写真として収めることで、単に事業ごとの独立したサイトに見えるのではなく、根底で一つに繋がっているグループとしての強さと温かみを表現しています。
株式会社クリーンテックホールディングスさまのWEB実績はこちら>
まとめ:グループ全体の信頼を高め、各事業の魅力を届けるWEBサイトを目指して
複数事業やグループ会社を展開する企業のWEBサイト設計において、「統一感」と「事業の個性」は決して対立するものではありません。
- 基本のトーン&マナーで全体の基盤を固め、企業としての信頼感を担保する
- 素材やAI画像に頼らず、現地撮影の写真やカラー、導線設計で事業固有の誠実さと風土を伝える
- 現場の要望を汲み取りながらも、全体の基本ルールに沿って社内調整と合意形成を進める
このバランス設計を徹底することで、グループ全体のブランド価値が高まり、各事業の成長を後押しするWEBサイトが完成します。
自社のWEBサイトで「事業ごとの見せ方がバラバラになっている」「リニューアルしたいが全体のまとめ方に悩んでいる」とお悩みの方は、ぜひお気軽にデザインエイエムまでご相談ください。
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デザインエイエムでは、企業の想いや根底にある志を丁寧にひもとき、WEBサイトやロゴデザインをはじめとする各種クリエイティブを通じて一貫した世界観をカタチにしていきます。
「自社の複数サイトはどちらのパターン(画一的 or バラバラ)に当てはまるか?」「まずは現状のサイト診断をしてほしい」といった段階からのご相談も大歓迎です。社内での合意形成やコンセプト整理にお悩みの場合も、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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【Texted by】
西村(designer)

企業のバックボーンや現場のストーリーに耳を傾け、本質的な魅力を引き出すWEBデザイン・グラフィック制作に従事。BtoB企業からグループ会社まで、一貫した世界観づくりとユーザー視点のサイト設計を得意とする。
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