「育て直しの現場から見えてきた、仕事にも子育てにも通じるヒントー少年院でのボランティア活動から見えてきたこと」Connect&Grow第2回レポート
2025/10/30

2025年、自社で新たな学びの場としてスタートした「Connect & Grow(コネクト&グロウ)(*1)」。
第2回目となるイベントを開催しました。
今回は、少年院でボランティア活動をされている相戸和歌子さんを講師にお迎えし、社会の見えにくい一面を知る時間に。オフラインとオンライン(アーカイブ含む)を合わせて約20名以上の方にご参加いただきました。
→ 相戸さんの詳しいプロフィールはこちら
企業の課題をブランディングデザインで解決するだけでなく、クライアントの皆さまや仲間と学び合い、信頼関係を築きながら、共に未来を作っていきたい。その思いから、「つながり」と「成長」をキーワードに立ち上げた学びの場。
社会の見えにくい部分に光をあてる
このテーマを選んだきっかけは、仕事の領域だけでは出会えない方々の話を聞くことが、きっと新たな気づきにつながる。同時に、社会の中で見落とされがちな課題や、そこに向き合う人たちの存在を知ることが、誰かの背中を押す一歩になるかもしれない。
講師の相戸さんの活動そのものを、少しでも多くの方に知ってもらいたいという願いもありました。
学びの場としての少年院
講演は、「少年院にどのようなイメージを持っていますか?」という問いかけから始まりました。
少年院は刑罰を与える場ではなく、「矯正教育」と「社会復帰支援」を目的とした教育施設。前科がつくわけではありません。
入所する子どもたちは“罪の重さ”ではなく、“保護の必要性”によって判断されているといいます。元の環境に戻ると再犯や危険が想定される場合、家庭や地域のサポートが難しい子どもが優先的に入所する仕組みです。
彼らの多くは、家庭内での虐待や貧困など、厳しい環境の中で居場所を失った子どもたち。
そうした状況の中で、唯一受け入れてくれた存在が“悪い大人”であったというケースも少なくないといいます。
相戸さんは、「少年たちは社会の仕組みの中で生まれた被害者でもある」と語りました。
教育の現場から見えた“社会の影”
相戸さんはもともと教育分野でキャリアを積み、将来のリーダー育成に携わっていました。
あるとき、生徒の何気ない発言から、社会の一側面に対する理解や想像力の欠如に気づかされ、強い衝撃を受けます。
それを機に自身の仕事の意義を深く考えるようになり、社会起業スクールへ通うことを決意。
そこで出会ったイギリスで刑務所を出所した方への就労支援を行う団体の話に深く心を動かされ、「困難を抱える人たちの支援」に関心を持ち始めます。
そして、自身が子どもの教育に携わってきた経験から、次第に少年院という現場に目を向けるようになりました。
ひとつひとつの行動が、全国へと広がっていくまで
相戸さんは、活動の構想を文章にまとめ、周囲に話すことから一歩を踏み出しました。その過程でさまざまな方とつながり、少年院関係者への提案の機会を得ます。
活動の転機となったのは、参加した女性リーダー合宿。スピーカーとして参加されていたSONYの社員から、プログラミングキット「MESH」(*2)を活用した学習支援の取り組みを聞き、これを少年院でも活かせるのではと考えます。
そのわずか1か月後には、SONYの担当者とともに法務省へプレゼンを行い、少年院でのトライアル導入が実現しました。
最初は限られた施設での取り組みでしたが、継続的な活動が口コミで広まり、やがて国家予算が付き、全国の少年院で正式に導入されることとなりました。(現在、「MESH」はコミュニケーションを促す教育ツールとして活用されています。)
そして、現在は次のフェーズとして、音楽活動を通じた慰問にも取り組み、子どもたちにさまざまな経験や刺激を届ける活動の幅を広げています。
続けることで見えてきたこと
これまでの経験を通じて、次のような気づきを共有していただきました。
・現場のニーズを正確に捉えるためには、「聴く力」と「質問する力」が重要であること。
・日常の中で困っている人の小さな変化に気づける感度を持つこと。
・とにかく動き、つながり、そしてつなげていくこと。
・自分の中の想いを忘れず、自分自身でその炎を灯し続けること。
また、自分の理想や夢を言葉にすることの大切さについても触れました。
周囲に話すことで共感者が現れたり、思わぬ助言が得られたりすることも多く、行動の連鎖が生まれるのだといいます。
「本物になるには時間がかかる。焦らず、続けることが大事」
この言葉には、相戸さんが長年活動を続けてきた実感が込められていました。
講演の最後には、「ボランティア活動のすすめ」が語られました。
活動の規模や頻度ではなく、できる範囲でやってみることが大切。身近な困りごとに気づき、小さくても動くことで救われる人がいる。そうした一歩が社会を少しずつ変えていくのだと締めくくり、講演は終了しました。
参加者の声(一部要約)
「自分の想いを形にしていくプロセスを見せていただいたようで、とても勇気づけられました。改めて前に進む勇気をいただきました。」
「徹底的に動くことを厭わないバイタリティが素晴らしい。動くと波紋が広がり、そこに新しい出会いがあり、また動くことになる。動き続けることで世界が少しずつ良くなる──それが“ポジティブ”なのだと感じました。」
「人を助けること、特に罪を犯してしまった方々を継続的に支援される意志と寛容さに感服しました。自分も、何をライフワークとして大切にしていくかを考えるきっかけになりました。」
ご参加いただいた皆さまと記念の集合写真
つながり、そして成長へ
講演終了後には、オフライン参加者を中心に相戸さんを囲んで懇親会を実施しました。
そこでは、参加者同士がそれぞれの感じたことを共有し合い、会話の中から新しいアイデアが生まれる場面も。
「次はこんなテーマも面白そうですね」と話が弾む様子に、まさに「Connect & Grow」の名のとおり、“つながり”と“成長”が生まれていることを実感しました。
相戸さんから素敵なメッセージが書かれたギフトのサプライズプレゼントもありました!
これからの「Connect & Grow」に向けて
今回のイベントを通して感じたのは、「知る」ことの力です。
社会の課題や人の想いを知ることは、私たち自身の視野を広げ、日々の生活や仕事の中にも新たな気づきや意味を見出すきっかけになると感じました。
「Connect & Grow」は、今後もテーマを変えながら続いていきます。
日常の中で見過ごしていること、改めて立ち止まって考えたいこと―そんな“学びの芽”をみなさんと一緒に育てていけたらと思います。
次回も、新しい出会いと気づきの時間をお届けできるよう企画していきます。
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【Texted by】
MIZUHO OGURA(director)







