[アズザクロウフライ]単にマークを作るだけなら、他にいくらでも。物語性のあるロゴは、お客さんとのコミュニケーションにもひと役もふた役も買ってくれています。
2019/07/28

都内10店舗のバー及びビアパブを運営しなから、バーテンダーの育成と独立開業支援を進めている有限会社アズザクロウフライ(atcf)の小林CEO。弊社は世界中から集めた200種類以上のクラフトビールが味わえる「目黒リパブリック」のロゴマーク、看板、フラッグ、コースターを制作させていただきました。「すべてのバーにグラフィックデザインが必要なわけではない」と語る小林CEO。「目黒リパブリック」のお手伝いをさせていただいた背景をじっくり伺いました。
ご協力いただいた企業さま

有限会社アズザクロウフライ(atcf)
代表取締役 小林信秀さま
飲食・宿泊
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そうですね。2010年の秋でした。もとは同じ場所で和食バーをやっていました。利益も十分出ていましたが、料理長が上がることになりまして。だったらかねてからやりたかったクラフトビールの店にしようと、業態をがらっと変えました。バーとビアパブ。一見同じようでも、実は雰囲気づくりからして“似て非なるもの”。“似ていて違う“っていうのは、“全く違う”より逆に難しいんです。今はクラフトビアパブという業態が存在しますが、当時はほとんどなく、あっても海外の模倣でした。僕は模倣には全く興味がなかったし、ブランディングを含めて、ちゃんとしたデザイナーの方にお願いしてみようと思った次第です。
溝田さんとは以前から面識がありました。仕事の実績も存じ上げていましたが、7店舗目でようやくお願いしたのは、この人には新しいことにチャレンジするときにお願いしたいと思っていたからです。似て非なる業態への挑戦、考えを明確にする上でも僕自身アウトプットする相手が必要でした。
その後の出店で、弊社にお声がかからなかったので、少々案じておりました。
御社には納得と満足のいく仕事をしていただきました。ただうちがやっている店は「目黒リパブリック」以外は全部バー。バーってきらきらしたインフラではないので、ロゴが必要ないことも少なくありません。極端な話バーテンダーがロゴなんです。店自体は目立たず、食べログでは★2.5だけど常連さん中心で満席というのが理想なんです。万人に受ける必要はありません。でも、ビアパブがそれでは潰れます。「目黒リパプリック」も38席ありますから、★2.5の常連さんでは成り立ちません。
ロゴはエンブレムのようなデザインがご希望でしたね。
溝田さんは「デザインは飾り立てることより、削ぎ落とすことのほうが大切」という考えを持っていらっしゃることは知っていました。知りつつも「細かいのを作ってください」とお願いしました。あえて面倒くさいものを、時間がかかりそうなものをお願いしました。そのほうがお得感があるし、やってもらった感もあるし…。というのは言い過ぎですが、元来エンブレムは、由来のあるシンボルや歴史など意味のあるものの組み合わせです。お客さんに「このマーク何か意味あるんですか」と聞かれるくらいのもの、コミュニケーションツールにもなるものを作りたいという思いが僕の中にありました。
小林さんが思い描いていたご提案はできましたでしょうか。
はい。店名の「MEGURO REPUBLIC」を主役に、目黒のサンマがいたり、目黒川が流れていたり。目黒という土地のこともすごく意識してくれ、なかなか盛りだくさんの提案でした。“ローカル”は僕が店を作る上でのこだわりです。職場でもなく家庭でもなく、ひとりでもふらっと行ける地元のサードプレイスを作りたいという思いがあるからです。酒を飲むという若干グレーな場所で地元もしくはその土地で働いている人々が集まるきっかけを作りたい。そこに存在意義を見い出したいという僕の思いは、十分提案に盛り込まれていました。
ただ、一発OKではありませんでした。実際、ビジュアルになることで、僕のほうのイメージもより明確になり、細かくブラッシュアップしていただきました。作業量は多かったと思います。いろいろやってもらいました。真新しい感じは酒場にはふさわしくないという理由から、ホコリをかぶったように見える加工まで施されているんですよ。話も本当によく聞いてくれました。深いところまで堀り下げるのがすごく上手くて、モトはとりましたね。
本当の意味での「モト」はとれていますか?
こういうものは瞬間的にモトがとれるものではありません。お店は3年も経てばボロくなりますが、ロゴは劣化しません。長く使っていけるかどうかが「モト」だと僕は思います。それとグラフィックの力を再認識しました。ともするとかっこ悪くなりがちなペーパーコースターまでもが「かっこいい」と言われたり。ロゴ、看板、フラッグ、コースター。それぞれが、とてもよいコミュニケーションツールになってくれています。ニュースレターなど会社発信のいろいろな掲載物にも、メグリパのロゴの使用頻度はダントツです。
今後、弊社に期待することはありますか。
バーという業態のなかで25年、やりたいことはひと通りやった感があって、実は1年前から会社のモデルチェンジをがっつりやっています。「100人のBARオーナーを輩出する」っていうミッションで動いているんですけれど、バーテンダーとしていい人材を育てて、自由で多様な自分のバーが持てる環境を用意したいと思っています。たくさんのバーオーナーを輩出して、バーカルチャーを発展させていきます。そのための仕組み作りを今、本気でやっています。同じ会社ですが違う会社を作ったくらいの勢いで、僕自身のブランディングの必要性も感じています。グラフィックがどれくらい必要なのかも含めて、相談したいところです。
今後ブランディングやロゴ制作を考えている方に、経験者として伝えたいことはありますか。
僕は溝田さんにブランディングをお願いして、「目黒リパブリック」にストーリーと奥行きを持たせることができました。ブランディング=伝える力だということも学びました。単にマークを作ることだけが目的なら、他にいくらでもあると思います。それと自分の思いをさらけ出すわけですから、信頼関係が築けるかも重要ですね。 誤解を恐れずに言うと、溝田さんのよさはかっこつけて、かっこよくいようとしているところ。それも「この人にお願いしよう」と思ったひとつの決め手です。デザイナーがかっこ悪くて、仕事ができるとは到底思えないですから。デザイナーはそのままがエンブレム。もちろん見た目だけは論外ですが、実力は言うまでもありません。
ありがとうございます。「腹が出たらデザイナーをやめなければならない」と、ランニングや筋トレ頑張っていますので、これからもよろしくお願いします。
ご協力いただいた企業様
目黒リパプリック
有限会社アズザクロウフライ(atcf) 代表取締役
小林 信秀様
1974年、東京都生まれ。吉祥寺の繁華街を遊び場所に育ち、15歳からバーテンダーのアルバイトに就き、20歳で独立。出店を重ね現在は10店舗のバー及びビアパブを運営。昨年よりビジネスモデルを変更し、「日本でバーテンダーがいちばん働きたい会社」をテーマに、バーテンダーの育成と独立開業支援に特化。バーカルチャーを次世代に継承するリーディングカンパニーを目指している。
本メディアは、デザインが経営課題を解決する手段であることを経営者の方へ広く知っていただきたいという思いのもと、情報発信を行っています。
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