経営を強くするためのDESIGNAM MAGAZINE(デザインエイエムマガジン)

[メゾン・ド・ユーロン]「こんなにシンプルでいいのだろうか」。第一印象の迷いは、説明を聞いて一瞬で消えました。イメージカラーの赤も次第に「ユーロンレッド」と言っていただける存在に。

2019/09/28

赤坂の閑静な住宅街の一角に佇む「メゾン・ド・ユーロン」は、ヌーベルシノワの先駆として20年の歴史を持つ中国料理店です。ショップカードに始まり、続いて封筒とリーフレットと手提げ袋を、最後にウェブサイトのリニューアルをお手伝いさせていただきました(2010年)。ブランディングを手掛けるにあたってはイメージカラーを見直してイメージを統一し、インターナショナルを意識した名店にふさわしいご提案をさせていただきました。時を同じくして2010年11月にはミシュラン一つ星を獲得。「思い切ってツールを作ってよかった」と言ってくださっています。

ご協力いただいた企業さま

Maison de YULONG / メゾン・ド・ユーロン
料理長 阿部淳一さま
飲食・宿泊
制作実績はこちら

AM名店として知られている「メゾン・ド・ユーロン」さんですが、この記事を読んでくださる方に向けて改めてお店のプロフィールをお聞かせ願えますか。

阿部私どもは“ヌーベルシノワ”をコンセプトにした中国料理の店です。オープンは1995年。2008年新体制での再スタートとともに、料理長として再び腕をふるっております。あくまでも中華の調理法で、西洋の食材を使ったり、洋皿に盛りつけたり。フレンチのコース料理のように一皿ずつお出ししています。

AM代表の溝田は会食にも使わせていただいて「とにかく美味しい。担々麺なんかは、もう他のはいいやと思うくらい美味い」と言っております。

阿部ありがとうございます。溝田さんには、以前から何度もご利用いただいておりましたし、デザインエイエムさんがブランディングを得意とすることは代表の松田からも聞いていました。当然、リスタートを機にショップカードやリーフレットやホームページを刷新したい思いはありました。でも、小さなレストランがそれをするには決断も必要で。実際、店内の改装に大きなお金を投じた我々には、一度に行なう予算はありませんでしたし。かといって、インターネットの格安パックでロゴやホームページを作ろうという気持ちにもなれず。初めは、以前からのホームページとショップカードを、住所と電話番号と地図を赤坂に変えて使っていました。 それから2年、リーマンショックからの回復を実感し始めた2010年の秋に「思い切ってブランディングをお願いしてみようか」ということになりました。といっても、最初にお願いしたのはショップカード。それでも、いつか御社に頼むことを励みにしていた私たちには「ついにこの時が来た!」の気分でした。心の中で小さなピースサインを出していました。

AM弊社としてはお店の実力と、外から見える印象の違いにもったいなさを感じていました。そこで「まずイメージカラーと店名の書体を整理しましょう」とご提案いたしました。

阿部以前のショップカードには、くすんだ緑色が使われていました。なぜ、食欲をそそるとは言い難い鈍色を使ったのかは思い出せないのですが、御社からの提案は“赤色”への変更。初めて見せられたときは、インパクトに驚きましたが、「日本におけるヌーベルシノワを発信するレストランとして、中国・日本・フランスを想起させるような赤色」という説明を受け、なんだかじんときました。考え抜かれた赤。それも優しくて品のある赤でした。そして今や「ユーロンレッド」 と言っていただける存在にもなりつつあります。 一方、赤い四角の中に配置された3つの店名 (「Maison de YULONG」「メゾン・ド・ユーロン”」「酒家__遊龍」)は、素人目にはフォントを変えて打ち込んだだけに見えました。正直「ちょっとシンプルすぎないか。こんなにシンプルでいいのだろうか」と思いました。でも落ち着いて眺めて見れば、これもまた溝田マジックでした。イメージカラーの赤色の中にフランス語と誰もが読めるカタカナで店名が記され、「酒家__遊龍」と店名を説明する言葉が静かにハーモニーを奏でていました。それはうちのお店そのもので、ロゴにもなり得るものでした。「あぁ、これがデザインエイエムさんの考える、“削ぎ落として本質を伝える” ということか」と腑に落ちました。「実績を残してきた溝田さんが言うんだから間違いないんだろう」とも思いました。僭越ですが、この人は余白の使い方がすごく上手いなとも思いました。

AMユーロンさんの料理は、中華でありながらフレンチのスタイル。白い器のスペースのなかにぽんと美しく料理が盛りつけられていますから、ホワイトスペースを生かすことは、いつも以上に意識しました。

阿部ショップカードの裏面も、めいっぱい情報を盛り込まずにホワイトスペースを大切にするところには、白い器に盛り付けていく私自身の料理とシンパシーを感じます。しかも、そのホワイトスペースもただなんとなく設けるのではなく、ひとつひとつに説明がつくのです。懇切丁寧にじっくり話を聞いてくれたうえで、生み出される理由のあるデザイン、本当に気に入っています。


AMありがとうございます。とはいえ途中、不安などはありませんでしたか?

阿部こちらの話もじっくり聞いてくれて、ひとつひとつ丁寧に説明を加えながらやってくれるので、不安を感じることはなかったですね。ひと通りのものができ上がって今感じているのは、統一感があるとお客様の印象もぐっと上がること。意外と封筒や手提げなどを固めることによってブランディングの土台がしっかりするのだということです。ただうちは目下のところ物販がないので、手提げは食べきれなかった料理のお持ち帰り専用袋。それで手提げを活かすためにも、お土産になるものを作ろうという話が出ています。先に手提げありきのおかげで、仕事が増えそうです(笑)。

AM実は先日、ユーロンさんの封筒を見ていいなと思って覚えていてくださった方から「うちも作ってほしい」というご依頼がありました。検索をかけて、当社のホームページに辿りついたとのことで。

阿部そういうこともあるんですね。オーナーの松田はできあがった当初「design by Akira Mizotaとか入れないんですか?」って聞いていましたよね。「そんなのは、いりません」ときっぱり断られましたけど。うちとしては素人の発想で、一流のデザイナーさんにツールを作ってもらっていることを、その時はちょっとちらつかせたかったんですけどね。

AMデザイナーの作品を作っているのではありませんから。ユーロンはあくまでもオーナーの松田さんやシェフ阿部さんの世界です。

阿部そういうことをさらりと言ってのける。私個人は、ユーロンのツールが整理されてから、他のお店のショップカードなどにも目が向くようになりました。でもなかなか印象に残るものは少ないですね。そんななかで、うちのロゴを覚えていてくださってわざわざ検索にかけるとは。それだけ印象に残るデザインであることを改めて知るお話です。

AM最後になりますが、今後の展望などはありますか。

阿部2010年、2011年と連続でミシュランの一つ星をいただきました。とてもありがたいことですが、溝田さんは「机の上のデザイナーにならない」とおっしゃるように、私は「星の上の料理人にならぬ」ようにやっていこうと思っています。

AMありがとうございました。これからもパートナーシップを築いていけたらと思っていますので、よろしくお願いします。

ご協力いただいた企業様

Maison de YULONG / メゾン・ド・ユーロン
料理長
阿部 淳一様
1964年東京生まれ。「東京會舘」を経て、「東京上海錦江飯店」で中国料理の知識と技術を習得、青山「オーセ・ボヌール」にて研鑽を積み、「炒めの達人」と評され注目を浴びる。1995年 「メゾン・ド・ユーロン」のシェフに就任。その後独立し「A-Jun」を立ちあげる。2008年再度「メゾン・ド・ユーロン」に招かれ、現在に至る。



本メディアは、デザインが経営課題を解決する手段であることを経営者の方へ広く知っていただきたいという思いのもと、情報発信を行っています。
更新情報や成果事例を受け取りたい方は、ぜひ以下よりメルマガにご登録ください!

    *は必須項目です。

    会社名*
    氏名*
    メールアドレス*

    ※当社プライバシーポリシーにご同意の上、送信願います。
    ※ご入力された内容を再度ご確認の上、送信ボタンを押してください。


    お問い合わせは、お電話でもお受けしております。
    (TEL 03-5465-1008)

    RECOMMEND 経営者やご担当者におすすめ

    おすすめの関連記事

    [片野誠事務所]封を開けたくなるデザインの封筒は優秀な営業マンです。ニュースレターひとつをとっても、ロゴの入ったきちんとした封筒で送ると、反応が違います。 2019/09/28 [クリーンテックホールディングス]全社共創ワークショップで得た気づき。分散組織を束ねたWebリニューアル 2025/07/16 [平吾設備]想いを形に、未来を紡ぐデザインパートナー 2025/01/27 [アキヤマ] 到底一人では叶わなかった最高のリブランディングができました。そして、営業も社員の志気もまったく変わりました。 2019/11/29 横浜のはちみつロゴ [中小企業診断士]お客さまの多くに指名されている意味がよくわかりました 2019/06/01

    記事一覧

    経営を強くするためのDESIGNAM MAGAZINE(デザインエイエムマガジン)

    多くの経営課題は「デザイン」が解決の糸口となることがあります。しかしデザインが何かわからない、どのように活用して良いのかわからない...そんな経営者が多くいることも事実。そんな経営者の頼れる右腕となり「アカルイミライ(AM)」へ向かうため、経営とブランディングデザインを結ぶ情報をDESIGNAM MAGAZINE(デザインエイエムマガジン)で発信しています。経営を強くするヒントとして、少しでもお役に立てれば幸いです。