中小企業のデザイン経営、はじめの一歩「会社の人格形成」
2022/04/26
「中小企業のデザイン経営、はじめの一歩」シリーズとして、前回は「入り口の考え方」というテーマでお送りしました。
特許庁から公開された「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック」(2021年6月30日)に基づいて、デザイン経営の入り口についてお伝えしています。
会社の人格形成
特許庁が、既にデザイン経営に取り組み、一定の成果をあげている中小企業に対して行った調査を元に、中小企業のデザイン経営の要素を整理したものがこちら。
9つの要素を3つのフレームに分けて説明しています。
その中でも特徴だといえるのが「会社の人格形成」に関わるフレームです。
・意志と情熱を持つ(MISSION)
・歴史や強みを棚卸しする(IDENTITY)
・未来を妄想する(VISION)
「会社の人格形成とは?」と思われた方もいらっしゃるのでは。
ここが中小企業がデザイン経営に取り組む際のポイントです。
中小企業では大企業に比べ事業領域の幅が狭く、一つの商品やサービスが経営に与える影響が大きいと言えますよね。
逆に言えば、企業イメージが商品やサービスの売り上げを左右しやすい。
企業がどういう歴史を持ち、
いま何に注力し、
これから先どんな未来を目指すのか。
そういった「人格」を明確にすることが、売上や採用、社内の雰囲気の改善にもつながるのです。
デザインエイエムがお客さまの「人格形成」に関わるとき
具体的に、当社がお客さまの「人格形成」に関わるプロセスをご紹介しましょう。
1.ヒアリング・リサーチ
まずは兎にも角にもヒアリング。
デザインと聞くと「カタチにする」ところがメインと考える方も多いですが、実はヒアリングも非常に大切です。
「人格形成」に関わるには、その人(企業)のことを知らないと始まらないので、当然ですよね。
お客さまのこれまでやこれから、根本にある志や情熱について理解するには、莫大な時間や労力が必要になります。
当社ではこれまでのノウハウを詰め込んだ、オリジナルのヒアリングシートをご用意しています。
お客さまのお話を踏まえて、ヒアリングシートにはないご質問をしたり、
本社や工場の見学に伺ったり、
経営者の方とお話した後に、各部署の社員の方からもお話を伺ったり…
時には、お客さまのお客さまとなり得る方へインタビューしたりもしています。
まさに「深く潜って探っていく」ような感覚です。
2.アイディア出し
ヒアリング・リサーチを通して得た情報を、社内で複数名のデザイナーに共有します。
「1人のデザイナーが担当するのではないの?」と思われる方もいるでしょう。
もちろん、担当デザイナーは1名つくのですが、
「人格形成」の段階では、複数のデザイナーの視点を取り入れ、様々な角度から見て、広くアイディア出ししていく必要があると考えています。
3.ご提案内容の整理
広く出したアイディアをチェックし合い、ブラッシュアップしていきます。
お客さま「らしさ」とは何か?
複数回のチェックを通して、デザイナー自身もさらに理解を深め、ご提案内容に落とし込んでいきます。
4.ご提案
「人格形成」はデザイナー側だけで意思決定できるものではありません。
練りに練った複数案をもって、お客さまの意見を伺う場が「ご提案」です。
ヒアリング・リサーチを通して私たちが感じた「お客さまらしさ」を見て、ご自身がどう思うか。
やはり「自分たちらしい」と思えるもの、または「こうありたい」と思えるものでなくてはなりません。
ご提案を受けて感じたことを率直に教えていただき、調整をしていきます。
5.人格形成
調整を重ね、「これぞ○○らしさ」と言える内容が固まったなら、そこではじめて「人格形成の設定ができた」のだと言えます。
いかがだったでしょうか?
自社のことになると意外と見えづらく、客観的な答えを導きづらいもの。
デザイナーのアプローチを活用してデザイン経営を進める意味は、客観的な視点を取り込めるところにもあると言われています。
最後に重要なことを。
「人格形成」はゴールではなく、デザイン経営のスタート(入口)です。
企業の「人格」は、デザイン経営に取り組んでいく際の「軸」となるものです。
以下の図でいうと、木の根の部分です。
「人格」に反した戦略をとっていないか?
WEBサイトや広告、SNSなどで発信している内容や世界観は適切か?
確認すべき点はたくさんありますが、「人格」が明確になっていればブレることなく進んでいけるので、とても重要なことです。
まずはじっくりと付き合えるデザイン会社を見つけるところが、スタートになるかもしれません。
次回以降は、お悩み別にデザイン経営に取り組む際の入り口を紹介したいと思います。お楽しみに。
中小企業のためのデザイン経営ハンドブック
【Texted by】
ARISA KUSABA( director )
本メディアは、デザインが経営課題を解決する手段であることを経営者の方へ広く知っていただきたいという思いのもと、情報発信を行っています。
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